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博物館における「熱心さ」には思い出があります。
1988年5月29日、私は京博の「仁和寺の名宝」展を訪れました。今は国宝の薬師ですが、当時発見されたばかりで未指定のまま出品されていました。この像の前でライトをあて一眼鏡で見つつ、ファイルに赤鉛筆や青鉛筆で書き込んでいる一人の若者がいました。「図録では10,7センチとなってるけど、台座をいれればもっと大きいね。」と話しかけると、若者は「座高をとってる。その方が他の如来像と比較しやすい。藤原くらいなら髪際線までで測るのが普通。」と答え、この像のみどころをとうとうとレクチャーしてくれました。すごく面白くて、私はノートするのに必死でした。彼は以前、三重県博でも見かけたことがあり、その時もすごく熱心だったので印象に残っていたのです。身分を尋ねると、東京芸大の院生とのこと。私が他の展示品を見て、閉館前にもう一度薬師像の前へ行ったら、彼はまだいて、話を聞くと「開館から今までこの薬師一体だけを調べてた。」とのこと。さらに「昨日も来て一日中この像を見ていた。」
さすがに「ただ者にあらず」と思いました。
しばらくしてNHKの番組で多武峰伝来の東博の十一面観音を取り上げたとき、かの若者が映っており、名前を知りました。松田誠一郎氏だったのです。
こういった方がおられるわけですから、素人の私なんて・・・
時間をかければよいというものでもないでしょうけど、見ているようで実は見えていない気がして不安になることがあります。
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